VTOL型ドローンの飛行制御に関する調査研究
人の搭乗する大型機ドローンメーカーのベンチャー企業様からご依頼をうけまして、飛行制御に関する調査研究をやらせて頂きました。お客様のご厚意によりまして、事例紹介として内容を公開してよいというお言葉を頂きましたので、当社の実施しました技術サービスを紹介させて頂きます。
事例紹介
背景・お客様ご要望
今回のお客様は大型機ドローンメーカー様ですが、量産開発にあたってFCU(Flight Control Unit)の安全性、認証などの問題から内製化が必須であるという判断から以下のようなご要望がありました。
- 今までの試作機のFCU、およびESC(Electronic Speed Controller)は既製品を使用していた。
- ドローンの量産(市場投入)を目指すにあたり、FCUおよびESCの内製化をしたい。
- そこで、内製化するにあたり、まずは飛行制御について開発をしたい。
- 飛行制御については、将来の拡張(性能向上)を見据えたものとしたい。
- 将来の拡張の際のベンチマーク対象となるような基本的な制御(一般的なドローンの制御手法で簡素な制御)とする。
- 拡張性のある構造とする。
調査研究の内容(飛行制御の制御系設計)
上記のお客様のご要望を最大限に考慮して、飛行制御に関する調査、検討を繰り返し、ドローンの一般的な基本制御の構成、制御器を決定し、制御器設計の後、シミュレーションによってその妥当性を確認しました。

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納品物

今回のプロジェクトを終えて
今回の調査研究は、量産開発前のフィージビリティスタディという位置づけでした。その位置づけや目的、ご要望を最大限に考慮し、スピード感を持ってやらせていただきました。しかし、あくまで量産開発を見据えた調査研究である為、量産開発に移行した時のことも考えて、厳密に実施しないまでも当社のシステム設計(制御系設計)のプロセスにある程度準拠して実施しました。

今後は、手戻りのない確実なソフトウエア仕様を作る為には、RCP開発によって実機の知見を蓄積していくことが必須であるということをお客様とお話をさせて頂いています。量産開発における「制御系構想」や「制御系設計」と並行して、先行でRCP開発のフィージビリティスタディを実施するという方法もありますし、量産開発に着手する前に今回のように調査研究という位置づけでRCP開発を実施するとういうやり方もあると考えています。
また、ドローンの飛行制御はFCUのソフトウエアの中核を成すソフトウエアですが、FCUのソフトウエアはそれだけではありません。状況に応じて制御を切替えるロジックやフェールセーフなどのソフトウエアもあります。例えば、ホバリング時や着陸時は位置制御が適していますし、通常のパイロットが操作する運航時は基本的には速度制御が適しています。また、自律運航時は位置制御が適しています。パイロットが操作する運航時においては、状況に応じて機体座標で目標値を出したり、慣性座標で目標値を出したりといった切替えもします。このように、状況に応じた制御の切替えや目標値の切替え、あるいは故障時の制御切替えなどの最適解を検討(機能系設計)するには、まさにMBSEによるソフトウエア設計の手法が効果を発揮する領域になると考えています。
コアとなる制御系設計については今後、まだやるべきことは多いですが、道筋は見えてきました。今後は、このような切替えロジック的なソフトウエアの検討(機能系設計)が課題であり、実施していく必要があるとお客様とお話をさせて頂いております。
2025年9月15日(了) エムビーテックESP株式会社
お客様の声
構想段階の不確実性を、技術で安心に変えてくれました。
私たちは、人が乗るVTOLドローンという前例の少ない領域に挑戦しているベンチャー企業です。限られたリソースの中で、どこまで品質を追求できるか──それは常に時間との戦いでもあります。 人が乗るVTOL機の制御については、正直、自分たちだけでどこまで設計できるのか不安がありました。安全性や冗長性を考えると、何をどこまで詰めればいいのかも曖昧で…。
今回、MB Tech ESPさんには初期の構想段階から相談に乗っていただきました。Simulinkで制御構造を見える化してもらったことで、社内でも議論がしやすくなり、「この方向で進めていいんだ」と納得できました。 驚いたのは、抽象的だった構想が、数式とブロック図によって「実装可能な設計」に変わっていく過程です。まさに、アイデアが技術に翻訳されていく瞬間を目の当たりにしたようでした。
納品された構想書や設計書も、単なる資料ではなく、社内レビューや量産開発のベースとしてそのまま活用できる内容でした。特に推力配分や姿勢制御の考え方は、今後の内製化にもつながると感じています。また、私たちだけでは気づいていなかったような今後取り組まなければならない事も見えてきました。これは、当初お願いした際に想定していたこと以上の成果でした。
「技術を預ける」ことに不安はありましたが、人が乗るVTOL機の開発は1社だけで完結できるものではありません。私たちにとって、MB Tech ESPさんは技術的な伴走者になりえるパートナー企業です。今後、制御システムの内製化に向けて、さらにお話をさせていただければと考えています。
2025年9月16日 S技研株式会社
当社は、制御系設計や制御ロジック設計といったシステム設計(上流工程)からソフトウエア開発(下流工程)まで一気通貫で技術サービスを展開する体制を整えております。また、プロセス構築のご支援も可能です。コンサルティングという立場でのサービス提供に加え、ソフトウエア開発などにおきましては、当社で開発体制を組んで実際にソフト開発をして納品するといったエンジニアリングサービスの提供も可能です。
また、制御系設計はとても専門的な内容になります。このような量産開発前のフィージビリティスタディについてもご支援が可能ですので、制御系設計に関するコンサルティングなどをご検討の企業様は、ぜひご相談ください。
まずは、お気軽にお問合せください。